低年齢での海外移住が子どもの言語発達に与える影響

語学学習

テーマについて、母語の習得と現地語の習得、子どもの「自分は何者なのか」という自我、アイデンティの確立の3方面から私の経験と学んできたことを元に検証したいと思います。

0歳から3歳で4カ国に滞在した娘の母語と現地語習得

母語とは、「最初に覚えた言葉」母国語とは、「国籍のある国の言葉」です。

国籍がどこであるかに関わらず育つ環境で母語が決まります。

娘は日本と台湾のクォーターで幼少期からいろいろな国に滞在していますが、国籍は日本で、最初に覚えた言葉も日本語です。

娘はお腹にいるときはマレーシアにおり日本で生まれ、0歳3ヶ月でラトビアに移住しました。0歳の赤ちゃんも全身で周囲の言葉を聞いていますが、私たち夫婦は日本語で会話していて子どもにも日本語で語りかけ、付き合いのある知人も日本人がほとんどだったのでたまに聞く英語やラトビア語、ロシア語の影響は受けていないと思われます。

1歳で2ヶ月間台湾に滞在。
その時は台湾の家族は娘に中国語で語りかけ、私たちも中国語を話していることも多かったので娘も少しは中国語を認識したかもしれません。

それから2歳までは日本の私の実家にいて完全な日本語環境で育ちました。簡単な2語文を話していました。2歳半ごろ、日本で私と二人暮らしになり、子ども園に入りました。その頃急にペラペラ長い文を話すようになりました。

内容はよくわからないことが多かったですが(苦笑)長い文を高い声で話しているのがとても可愛かったです。家では基本的に私と2人だったので子ども園の影響も大きかったと思います。

3歳半で中国に移住。現地幼稚園に入園しました。日本語は基本的に私との会話と家でのテレビのみ。外は完全に中国語環境です。

2ヶ月目にはもう中国語をいくつか話すようになり、4ヶ月目には独り言や口ずさむ歌が中国語になって母語の喪失を懸念するほどでした。

母語は4歳ごろ確立する

中国滞在4ヶ月後
4歳で日本に一時帰国、のつもりがコロナロックダウンで10ヶ月間日本に住むことになりました。その間は私の実家、つまり祖父母の家に滞在し、また完全な日本語だけの環境になりました。

娘の中国語はなんとたったの1週間で消え、何事もなかったかのように日本語だけの日々に戻りました。

幼児の適応力、順応性優先事項を察知する能力には本当に驚きます。

一般的に、母語は4歳ごろに確立するそうですが、この日本にいた4歳の10ヶ月で娘の日本語は
飛躍的に伸び、読み書きもできるようになって完全に母語になりました。

読み書きも私がやらせたわけではなく、紙に字を書いたり、おもちゃの説明書を朗読したりしていたのでドリルや本を買ってあげたら自発的に喜んでやっていました。教えてもいないのに漢字も2、3個書けるようになっていたのは、中国にいた影響だと思います。

もしもこの4歳の10ヶ月を中国にいたら反対に中国語が飛躍的に伸び、日本語が遅れたかもしれません。

環境になじむために現地語を早く習得してほしいと思っていた私は焦りもありましたが、後で4歳が母語確立に最も重要な時期だと本で読んで、母である私の母語、そして娘の国籍の言葉をここでしっかり確立できたのはかえってよかったのだと思うようになりました。

4歳ごろに外国に滞在している場合は家庭での母語環境が大切になってくると思います。

5歳でアイデンティと母語を意識し始める

4歳の終わりに中国に戻りました。

今度は、3歳の時のようにスムーズに中国語を話すようになりませんでした。幼稚園でも民族や国家という概念の教育が始まり

「我是中国人」私は中国人です。

という言葉を他の子供たちが大声で朗読する中で、先生は娘を取り上げて子どもたちに「中国」「日本」「外国」を教えたらしく娘は「私は日本国人です。」「外国人です」そんな言葉を覚えて帰ってきました。

この「私は日本国人」だから「日本語を話す」「中国語はわからない」という意識が、娘の中国語習得に影響を与えるようになりました。

これは多民族国家や外国人が多く住んでいる国際都市では起こり得ないことかもしれませんが、私たちが住んでいる町は内陸の地方都市で外国人を見たことのない人がほとんど、幼稚園でも娘はただ1人の外国籍だったため先生は悪気なくそんなふうに娘を取り上げてしまったのだと思いますが、この娘に芽生えた「民族意識」が本当に厄介なものになりました。

私自身は世界を放浪していて「私は地球人だ」くらいに思っているので住んでいる場所の言葉を話すのは当然だと考えていますが、中国人は特に民族意識が強く、愛国教育が強烈なため、幼い子どもたちにもこのような意識を植え付けます。

家庭では私と2人で日本語、家で見るYoutubeやアニメも日本語時々テレビで中国のアニメを見る。
外では中国語のみの環境です。

ところが外で中国語で話しかけられても娘は答えません。公園などで他の子供に一緒に遊ぼう、と言われたら逃げる。常に私の方を見ていて日本語で話してくる。

なのでご近所の大人などは「中国語わかるの?」と心配してくれたりしましたが、娘は聞いて意味はわかっているのに「答えたくない」「中国語を話したくない」「だって私は日本国人だから」そんなことを言うようになりました。

言語習得能力の問題ではなく、このようなアイデンティの意識が阻害要因になるとは正直想像していませんでした。それはもっと大きくなって思春期ごろに出てくる問題と思っていたのですが、5歳でもうこの問題に直面しました。

それには娘が4歳の言語確立の重要な時期に日本にいたことと、中国という特別に愛国心、民族意識の強い国家のしかも外国人のいない田舎にいること、パパや他の家族がいなくて日本人であるママと2人暮らしであることこの3つの要因でこんなにも早く現れたことだと思います。

「あなたには台湾の血も入っている。もう1人のおばあちゃんは台湾人、つまり中国人で(大陸ではこういうことになっているので)中国語を話していたのよ。」そんなふうに言ったところでそばにいないし、1歳から会っていなくてもうおばあちゃんもパパも亡くなってしまったので、娘は記憶もなく、ピンときません。

私たちの環境は、なかなか複雑で難しいですね。

5歳での海外移住が子どもの性格形成に与えた影響

娘は本来社交的で活発でリーダー気質のある子です。(仕切りたがりの祖母に似たようです)

3歳で中国に来た時は日本にいた時同様、知らない人にも自分から話しかけ、慣れてくると他の子どもたちを率いて遊んだりもしていました。

4歳の終わり、戻って2ヶ月で5歳になったので5歳と言ってしまいますが「恥ずかしい」という感情が芽生えました。

「中国語を話すのが恥ずかしい」
「中国語を話しているのをママに聞かれたくない」

外で人に話しかけられた時に大抵は簡単な「何歳?」「年中?年長?」「これ好き?」などの質問なのですが、それも答えないで黙っているので「なんでお返事しないの?」と繰り返し聞いてやっと娘が上述の理由を話してくれたのです。

おそらくは自分の中国語が他の子どもたちに比べて足りないという自覚もあり、日本人だから中国語を話さなくてもいい、といったような抵抗感もあるようですがなぜか一番は「ママに聞かれたくない」ようです。

幼稚園では親しい子どもや慣れている大人には中国語をちゃんと話しているそうです。私にはあまり聞かせてくれないけれど園では問題ない、コミュニケーションできてると言われるし、宿題の朗読やピンインの発音も私より上手に(笑)できているので、きちんと中国語の習得もしていってるようです。

私は娘の前でももちろん中国人と中国語で会話しているし、なに人でも住んでいるところの
言葉で話すのは必要なことで、恥ずかしいことなんか1つもないんだよ。

そう伝えているのですが娘が納得するにはもう少し時間がかかりそうです。

6歳になった冬休み、重慶に行った時に日本語を話す店員さんに会ったのですが、娘はその店員さんが日本語がわかると知ると途端に何やらたくさん話ししていたので、やはり子どもというのはたくさんお話ししたいものだし知らない人でも構わず自分の言いたいことを一方的に喋るもの。

それが中国人相手だとできないのは少なからず娘にストレスをかけているのではないかと思いました。

3歳以下で海外移住した場合と4歳から9歳で移住した場合の違い

3歳以下の場合は現地語習得は早いが母語の喪失に注意

私がバイリンガル育児について書籍やネットなどで学んだことと自分の実体験を合わせて言えることは、3歳までに外国に移住して現地幼稚園に入れるなど外が完全に外国語の環境になった場合、子どもは抵抗なく短期間で現地語を習得する。そしてそれまで話していた母語と現地語が”置き換わる”。

つまりリンゴを見て「リンゴ」と言っていたのが中国なら「苹果」英語なら「Apple」と言うように
なり、母語を忘れていく、ということです。

この場合、現地語の習得はスムーズですが、もしもバイリンガルにしたいと考えているなら母語を喪失しないように家庭で親が努力する必要があります。

国際結婚家庭で両親の母語が違う場合は在住国の言葉が母語でない方の親が徹底して母語で子どもと話すのがキーになるようです。

4歳から9歳は現地語習得にもある程度時間が必要

4歳で母語が確立するので、4歳以上とは母語確立後、という事になります。

この年齢になると現地語が母語に置き換わるという現象は見られなくなり成人と同じように”翻訳”形式で覚えるシーンが見られるようになります。

例えばリンゴを見て、これは日本語では「リンゴ」で中国語では「苹果」だよね。といった具合です。

子どもの中に「言語」「国」という概念が芽生え国によって言葉が違う、自分は何人だから何語を話す、それを理解します。成人同様、母語のシステムとは別に現地語のシステムを構築していきます。

この年齢になると現地語を覚えたからといって母語を忘れる、と言うことはあまりないようですが、混乱は見られます。娘の場合、日本語と中国語の発音がごっちゃになって六個を「りょっこ」(中国語では6をリョーというので)恐竜を「キョンロン」(中国語でコンロン)と言ったり。

でも本人も大抵はすぐに言い間違いに気がつきます。

そしてこの年齢の現地の子どもの言葉はかなり達者です。4歳ごろは母語の語彙や表現力が急速に伸びて、大抵の子どもはペラペラ何かしらずっと話すようになります。(個人差はあり)

それは見た夢の話をしたり昨日の思い出話をしたり、テレビでみた人の話をするなど、時系列に出来事を整理しながら言葉にする、ということをやるようになります。

幼稚園や小学校でも「お話をする」訓練が始まります。読んだ絵本の内容を自分の言葉で
語る。系統立てて人にわかるように話す練習を始めます。

そしてそれは3歳までの言語のストックがあるからこそできることで、第二言語の場合は難しいことです。

娘は6歳現在、友達と遊ぶ会話、大人とも簡単な会話はできますが、物語を語って聞かせるようなことは日本語ならできますが中国語ではまだできません。

絵本は3歳の時から中国語でも読み聞かせをしています。中国語のアニメも時々見ています。そうして語彙と表現のストックを増やし、小学校で他の子どもたちと一緒に訓練していく中で徐々にできるようになってくると思っています。

小学校低学年くらいになると幼児のようにあっという間に現地語ペラペラになったりしません。母語の干渉はすでに多少あり、子ども自身の意識も影響し長い目で見てあげることが必要です。

小学校低学年くらいの年齢で移住した場合、現地の子どもに言語レベルが追いつくのは最低4〜5年
かかるそうです。子どもを日本人学校などではなく現地の学校に入れて学校の教科学習を現地語でする場合、確かにこれくらいかかるような気がします。

ただ、発音に関しては完全ネイティブです。これは口腔内筋肉がまだ固まっていないうちに外国語の発音をし始めたため、そして何より6歳以下の子どもは模倣の天才です。なんでもマネしてそのままできる。

発音をよくしたいなら小さいうちに始めろ。

これは紛れもない事実です。

低年齢での海外移住が子どもの言語発達に与える影響:まとめ

1、3歳以下で移住した場合は現地語の習得は問題ない。母語の喪失に注意する。
2、4歳から9歳で移住した場合は現地語の習得にも少し時間がかかる。子どもの自我意識、言  いたいことがスムーズに言えないストレスを理解し、長い目で見てあげることが必要。
3、小さければ小さいほど発音は完全ネイティブになる

参考にさせていただいたバイリンガル教育の本はこちら
バイリンガル教育の方法

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