無数にある職業の選択肢の1つとしての語学教師
幼い頃から外国語に興味を持ち、国語と英語がもっとも得意な教科という学生時代を送り
高校の英語科、外語大学そして英語、中国語、日本語を使う仕事をし、海外5カ国に10年近く住み、いつの間にやら語学の専門家になっていた私ですが、
自分がこうして何の疑問もなくただ興味の赴くままに、好きだから、知りたいからやってきたことが、当たり前ですが他の人にとっては当たり前ではないんですよね。
学生時代も日本で会社勤めをしている時も海外在住時も、周りには似たような得意、好きを持っている人が集まっていたので”外国語を学ぶ、使う””外国人が近くにいる”それが私にとっては普通の環境でした。周りに国際結婚も多いし、地元の仲の良い友人は2人とも英語教師です。
だけど母親になっていったん帰国して個人事業主としてやっていこうと決めてビジネスセミナーやら起業塾やらに顔を出すと今まで出会わなかった趣味嗜好、得意を持っている人たちとたくさん出会いました。それぞれ美容だったり、心理学やスピリチュアルだったり金融や建築やヨガや医療や、実に様々なことの専門家です。
私が英語漬け、あるいは中国語漬けになっていた日々中国で店員と喧嘩したりマレーシアでインド人に文句を言ったりしていたその時間、(喧嘩上等かよ;)ある人はメイクを研究し、ある人は家を売り、ある人はマッサージをし、全く異業種の世界でそれぞれの”好き””得意”を積み上げていた。
起業塾で集まった20名程度の中に誰1人専門が被っている人がいないので、世の中には実にいろいろな業種があるもんだなあ〜と改めて思います。
その中から選んでいる職業は生まれた時の星回りによる天性の才能と嗜好、宿命のようなものと、親の職業だったり育った環境の中で受けた影響による後天的なものが混ざり合って自然と決まっていくのかな、と思います。
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語学教師って何する人?
・・・さて、前置きが長くなりましたが今回何を言いたいかって言うと、語学教師って何よ?ということについてです。
何でそんなことを思ったかというと、最近語学と全く無縁の、日本語しか知らない、興味もない。
外国に行ってみたいけど言葉が分からないから怖くて行けない。
そんな”好き”や”得意”の違う人々に出会って”外国語を使うのが当たり前”の環境にいた自分をちょっと外から見ることができたからです。
日本語教師同士なら誤解なく通じる会話が語学と無縁の人相手だと、なんか違う解釈をされる。外国語を教える難しさについて語っても、外国語を義務教育以外で習ったこともない人には1つも伝わらない。
中国語のこのレベルのこんな感じのニュアンスのことを質問されたらすぐには答えられないんだよね〜、ネイティブじゃないからニュアンスとか普段どっちをよく使うの?という質問は〜というような会話、語学教師同士ならそうそう、だよね〜。と何の支障もなく通じるのですが
語学と無縁の人相手に同じような言い方をしてしまうとえ?そうなの?ペラペラだから困ってないのかと思った。と、語学力が足りないんだという解釈をされてしまったりします。
自分の語学力と教師力は直結しない
「日本語ペラペラだからって あなた今すぐ「は」と「が」の違い説明できますか?」
「父はお酒が好きです」
「父がお酒が好きです」
「父はお酒は好きです」
この3つの文の違いを納得いくように説明できますか?
「日本へ行ったことがありますか?」と「日本へ行ったことがあるんですか?」の使い分けはどうやってしているの?
「暑いってば〜」の「てば」って何ですか?品詞は何ですか?
こういった 「そういえば何これ?」という違いを今の学習者のレベルで理解できるように説明して使い分けができるようにしてあげるのが語学教師です。
これは生まれた時から見聞きしている母語は体感覚で使えるようになっているので理論での説明は
専門に勉強しないとできないんですよね。
ネイティブはニュアンスとよく使うシーンがすぐわかるけれど何が違うのか、どうして違うのか、といった理論の部分は専門の教師でないとなかなか答えられません。
教師に必要な力は忍耐力と共感力
今私が担当している台湾人の学生の1人も、奥さんが日本人だから最初は奥さんに日本語を教えてもらおうとしたけどすぐ怒るからダメだった。と私のレッスンを申し込んだそうです。
これも日本人だからといって日本語を教えられるわけじゃないことの例ですが、アメリカ人だからって英語を教えられるわけじゃない、中国人だからって中国語を教えられるわけじゃないのです。
理論を専門的に勉強していない人は自分が感覚で使っている言葉を相手がなかなか理解しないと
腹が立ってくるんですね。
なんでわからないの〜!こうなんだからこうでしょうが〜!
特に夫婦はダメですね。夫婦喧嘩になってしまいます・・・。
語学教師に限らず、人に何かを教える立場の人には共通して言えることですが、教えるときに必要な力は
忍耐力と共感力!
自分がわかっていることをわからない人に教えるのは相手の反応、理解をじっと待つ忍耐力が不可欠です。忍耐力が欠けているのに教師になってしまった人はすぐ怒る、怖い先生になってしまいます。
せっかち、いらち、何でも自分で先にやってしまいたいような性格の人は教師に向いていません。
そして、理論を抑えた上で、相手の立場に立って想像できる共感力が必要です。
今この人は何が分からなくて止まっているんだろう?どうしてこんな質問をしてくるんだろう?
この共感力が高ければ、痒いところに手が届く親切でとってもいい教師になると思います。
ネイティブとノンネイティブの教師の違い
先にも少し述べましたが、ネイティブ教師はニュアンスやよく使うシーンがすぐにわかります言葉は生き物ですから、時代によってニュアンスやよく使う表現は刻々と変わっています。
例えば、「やばい」は昔は悪い意味でしか使わなかったけど今はいい意味でも使うことが普及していますね。こういった変化や、最新の流行語なんかはやはりネイティブが強いです。
ただ、専門的に対外言語教育を学んだ人でないと、文法を理論的に説明はなかなかできませんし、発音の仕方などを言葉で説明できません。
すでに母語の言語体系が脳の中に出来上がっている大人は、赤ちゃんのように言葉を吸収しないので
ただ真似してください、たくさん聞いてください、では習得できません。逆にノンネイティブは自分も外国語として学習した時に理論で納得していたりするので、その部分は比較的説明ができる。
だけど反対にニュアンスやよく使うシーンはネイティブほど分からないですよね。今現地で生活をしていたり、国際結婚で家族がネイティブならそうじゃない環境の教師よりはそういう部分もわかると思いますが。
特に現地生活から離れてしまうと流行の言葉に疎くなって、(仕入れる手段はありますが)放っておくと知識がどんどん古くなってしまいます。
”言葉は生きている”
日本人なら外国で生活していても大抵は家族や友人と日本語で会話することも多いし、テレビやネットやら日本語でみているので新しい日本語が全く入ってこないということもないでしょうが、外国語の場合は日本で生活していると本当に意識しないとどんどん遠ざかってしまいます。
ネイティブ教師とノンネイティブ教師とどっちから習ったらいいの?
外国語を習おうと思った時に、ネイティブかノンネイティブか迷う人も多いかもしれません。
私の場合は英語でいうと
中学校は日本人教師(義務教育)。
高校時代は日本人教師とALTのネイティブ。
オーストラリアに三週間の交換留学。(ネイティブ環境)
大学で日本人の教授から。
会社員時代にネイティブのマンツーマンレッスン。
中国語は
会社員時代にネイティブのマンツーマンレッスン。
その後台湾と中国の大学でネイティブ講師。
こんな感じで、ネイティブと日本人講師のどちらからも学んだ経験が豊富にあります。
自分自身がそのようにして2つの外国語を身につけた経験と日本語教師として外国人に母語を教えてきた経験、中国語を教えてくれと言われて日本人に教え始めたことからネイティブと非ネイティブの違い、メリットデメリットについてまとめてみたいと思います。
ネイティブ教師に習うメリット
- 規範的な発音を聞くことができる。
- ネイティブが使う言い回しや表現を多く知ることができる。
- 微妙なニュアンスの違いを教えてもらえる。
- 流行語をリアルタイムに教えてもらえる。
- 現地の生活習慣や歴史背景なども知ることができる。
- 直接法(媒介語を使用しない)の場合はその時間完全に習得したい言語の脳に
切り替えることができる。 - 外国の雰囲気に浸れる。
ノンネイティブ教師に習うメリット
- 発音の仕方を理論で納得できる。(口の開け方など)
- 文法や表現を理論で教えてもらえる。
- つまづきやすいポイントを親身にアドバイスしてもらえる。
- 分からない時は母語で質問したり説明したりしてもらえる。
- 伝わらないと言う緊張感がない。
- 目標言語の話者と話すときの注意点などのアドバイスももらえる。
ネイティブ教師のデメリット
- 通じない時に非常に困る。もどかしい。
- 細かい文法の質問を理解してもらえない。
- 何が分からないのかを誤解されることがある。
- 発音をただリピートすることによって修正される場合がある。
- 慣れないうちは緊張する。
ノンネイティブ教師のデメリット
- つい母語に頼ってしまって脳が切り替わらない。
- 教師の発音が規範的じゃない場合がある。
- 在住経験が少ない教師の場合は現地の生活習慣や流行などに
疎い可能性がある。 - 文法や言い回しに関して教師の知識が不足している場合がある(上級の場合)。
ざっとこんな感じでしょうか。私の主観が主なので人によって多少違うとは思いますが。
初級は日本人教師から。中級以降でネイティブ教師。上級で日本人教師とネイティブのダブル。
私が最近至った結論です。
成人が外国語を習う場合の話です。幼児は別です。
まず、最初の一歩はノンネイティブ、日本人の場合は日本人教師から習うのがいいと思います。
基本的な発音の仕方、文の構造、ルールなどを日本語で説明してもらうと無駄なストレスなくすんなり理解できます。文化や習慣の基本的なところも、その国が大好きなノンネイティブから教えてもらうと興味が深まったりします。
私の場合は大学の中国語の授業が中国が好きすぎて中国人にしか見えない日本人の年配の男性教授だったのですが、中国人は挨拶で「吃饭了吗?」(ご飯食べた?)って聞くんだよ〜!食は中国にありなんですよ〜。彼らは常に飯のこと考えるんですよ〜。(そんな感じだったかな?)とものすごく楽しそうに話していたのが今でも忘れられません。
ものすごく大きい字で 吃饭了吗? と黒板に書いたので、これが「おはよう」みたいな挨拶なんだ〜!という驚きと共に鮮明に記憶に残っています(笑)。
そして中級へ。
基本の発音と文法を理解して、語彙もそこそこ増えてきたらネイティブに本当に通じるのか確認したくなりますよね。
そこらへんでネイティブ登場。実際に会話して発音や言い回しの修正をしてもらったり通じる喜びを体感します。
そして上級と言われるレベルになると英語で言えば英検準一級。中国語ではHSK5級以降。
ネイティブと会話して語彙を増やし、退化させない練習が必要です。よりナチュラルスピードで話して漏れなく聞き取る訓練をする段階です。
それと同時に、上級以降でもう一度ノンネイティブから指導を受けるのが有効です。実は私は帰国して2年経ち、中国語を教える仕事を始めようかとなった時に日本人で中国語教師をやっている人に相談しました。
そして日本人の中国語プロフェッショナルたちと繋がっていくことになったのですが、長年何度ネイティブに修正されても納得がいっていなかった苦手な音の発音が、その日本人講師のチェックを受けてそこだったんだ〜!とすっと腑に落ちました。
ノンネイティブなんだけどよりネイティブに近い規範的な発音をするために自分自身が訓練されてきた人たちですから、うまく発音できていない音を聞くとどうしてその音になってしまうのか、聞いただけで口の形がわかってしまう。そして日本語で修正方法を説明してくれる。
これは非常に腑に落ちます。
ネイティブに相談しても、もっと大きい声出せばいいよ!とか大丈夫じゃね?わかるよ。とかしか言われなかったものをここがこうなっていますね。本来こうなんですよ。こうするとこう聞こえますよ、とか言ってもらえて超スッキリです。
ビジネス会話も困らない程度のレベルになってからお仕事できるレベルになってから、再度日本人教師に相談するのはとても効果的だと実感しました。
長くなってしまいましたが参考になれば幸いです。
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