外国語は外国に住んでいたら勝手に話せるようになるわけじゃない!
はじめに大前提のお話をします。
私は4カ国6地域合計13年海外に住んでいます。外大出身というのもあり、友人知人は海外在住者や住んでいた経験のある人が多く、いろいろな人のいろいろな状況を見たり聞いたりしてきました。
その中でオーストラリアやカナダに住んでいるから英語、中国や台湾に住んでいるから中国語ペラペラ、にはならないという例をたくさん見てきました。
たとえばアラサーの頃にお付き合いしていた人の父親の再婚相手(複雑ですみません)は家族でニュージーランドに15年ほど住んでいるけれど全然英語が話せなくて基本引きこもっていると聞きました。
台湾の日本語学校の同僚の中でも、すぐに中国語が上手になる人と、1年経っても2年経っても大した進歩がない人とどちらもいました。割合で言うと3:7くらいで進歩しない人が多かったです。
さらに個人的な話をすると、私は台湾で日台ハーフと結婚したんですが、義母は台湾人で、結婚当初で日本在住40年でした。日本に帰化もして、日本名を持っていました。
40年も住んでたらそりゃあ日本語ネイティブレベルでしょ!
いやあ、それが見事なカタコトなんですよ・・・・
さすがに耳慣れはしているので聴解能力はもちろん高くて、日本語の会話を聞き取ることはできているようなんですが、話すのがカタコトなんですよね。日本人の義父は中国語を話さないので、なんとなくカタコトで会話が成立している、そんな感じでした。(悪口にはお互いしっかり反応してましたけど苦笑)
コミュニケーションがうまく取れないからか、義母は40年経っても日本語と日本人に苦手意識を持っていました。一方で義母の妹も日本人に嫁いで近くに住んでいるんですが、彼女は日本語ペラペラなんですよね。発音も自然で、言われなければ外国人だとはわかりません。姉妹なので義母だけが特別に頭が悪いわけじゃありません。実際学校の成績は結構よかったと言っていました。
それならこの2人の違いは一体どこから来たんでしょうか?2人や義父から聞いた話、そして同じように現地に住んでいて現地語が習得できた人とできなかった人たちの行動や思考パターンを私なりに分析して、せっかくなら住んでいる間に言葉を習得したい気落ちはあるけど思うようにいかないとお悩みの方へ、参考になればと思います。
中国語だけでなく全ての言語に共通することだと思いますが、私自身が中国語圏に住んでいる間に中国語を習得して、在住歴も住んだ国の中で長いので、”中国語”に絞ってお話をさせていただきます。
私の中国語歴を簡単にお話しすると、台湾と大陸合わせて中国語圏在住9年目。初めて中国語に触れてから20数年、今では2時間話しても外国人だとバレない中国語力を身につけました。中国語コーチとして1年間日本人の成人学習者に中国語指導をした経験もあります。
さらに詳しい中国語歴はこちらをご覧ください。
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住んでいる間に話せるようになるための行動:基礎
中国や台湾に住んでいれば周囲全てが教材です。最大限に活用しましょう!
まず基礎がない人は基礎をしっかり勉強する
何事も土台ありきです。基礎が何より大事です。中国語を勉強したことがない人は、入門テキストを購入して独学するなり、中国語教室に通うなり、オンラインレッスンを受けるなりして基礎を固めましょう。
最初の前提のところで話した義母と義母の妹の違いの大きな部分もここにありました。義母はちゃんと学校で勉強したことがなく、妹は来日当初1年か2年か日本語学校に通ったそうです。
私は大学の第二外国語で3年学習し、卒業後6年ほどは気が向いた時に独学する程度で少しブランクが空いていたので台湾に行く前に中国語のマンツーマン教室に1年通いました。
時間のある人は大学に通うのが最も近道!
よほど天賦の才がある人以外は、学校に通うことをオススメします。現地在住で時間のある駐妻さんや非常勤日本語教師の方などは大学の漢語研修班に通うのが最も効率的で楽しいです。私は台湾で日本語教師の仕事をしていた時も仕事を非常勤にしてもらって2年間大学の漢語研修班に通いました。さらに結婚して広州に住んでいた時も1年間通いました。
週5日たとえ半日でも中国語学習に集中できる時間を持てたことで中国語力は飛躍的に伸びました。ネイティブかつ中国語教育のプロである先生にしっかり体系立てて教えてもらい、多国籍の学生と一緒に授業を受けるのは楽しみながら効率よく中国語力を上げる近道だと思います。
独学だとなかなか続かないものですが、大学に申し込んでしまえば行かないと、という気にもなります。それに独学との大きな違いは教室内でインプットしたものをすぐさまアウトプットできる点です。クラス内で会話練習は必ずあるので習った文型を利用してすぐに自分の口から出すことで定着します。
友達もできますし、縁があれば恋人もできます!私は台湾の大学で夫に出会って結婚しました。他にも留学先の大学で知り合った人と結婚した話はたくさん聞いたことがあります。(余談です)
私は予習復習もきちんとしてました。周囲が中国語環境なのでモチベーションが下がることもありません。周りから中国語会話が聞こえてくるマックやカフェで勉強するのは気持ちの良いものでした。習った言葉をすぐにネイティブ相手に実践できます。あるいはネイティブとの会話の中で分からなかったことが、後に授業や学習の中でわかるということも頻繁に起きます。留学の最大のメリットはこれだと思います。
仕事が忙しい駐在員さんや現地採用の会社員の方であれば、マンツーマンレッスンやオンラインレッスンがいいと思います。せっかく現地に住んでいるのであればオンラインより対面の方が断然楽しいし身につくと思います。
大学に通うなら1年は通いましょう。特に初級から始める場合、3ヶ月の短期コースで終わるとその半分のスピードで退化します。実際に友人にそんな人がいたんですが、3ヶ月の夏季留学をして帰国して3ヶ月経たないうちにほぼ話せなくなってました・・・。
語学習得にも3の法則が適用されます。毎日外国語環境に身を置いた場合、まず3週間で耳が慣れて雑音が意味を成すようになり、次に3ヶ月で少し話せるようになり、次に6ヶ月で一気にレベルアップします。6ヶ月の壁は超えないともったいないです。
1、モチベーションを継続できる
2、中国語教育のプロにしっかり体系立てて教えてもらえる
3、インとアウトがセットですぐできる
4、友達ができる
5、縁があれば恋人や結婚相手が見つかる
6、確実に語学力はアップする
7、生活にメリハリが出る
基礎学習を終えたと言える目安はHSK3級です。
画像:HSK公式
住んでいる間に話せるようになるための行動:応用
ドラマや映画だけでなく、バラエティとニュースをみよう
基礎学習で発音の土台と文法をしっかり把握したら、応用練習を開始します。以下の応用練習方法は基礎学習時にもできます。
現地でしかみられない作品がたくさん。中国語字幕でしっかり学習しよう!
ドラマや映画は日本にいても見られるものもたくさんありますが、中国は視聴制限をかけているので大陸でしか見られないものが多くあります。住んでいれば見放題です。中級以上なら中国語字幕で!時代劇はやはり言葉が難しいので現代劇を見ましょう。気に入った言葉はメモして口に出してみると使えるようになります。私のお気に入りのドラマは【都挺好】【我的前半生】【敗犬女王】など。どれも実生活ですぐに使いたい言葉が満載です。
会話力アップに直結するバラエティ番組
ドラマや映画以上に会話力アップに繋がるのがバラエティ番組です。正直大陸にはあまり面白いバラエティ番組がないかなと思っていますが、台湾は面白いバラエティ番組がたくさんあります。バラエティはドラマと違って極めて自然な会話で行われるので実践に本当に役に立ちます。中国語字幕も基本ついているので理解しやすいです。
ニュース視聴を毎日の習慣にする
私は外国語のニュースを見るのが好きです。国によってアナウンサーの雰囲気や話し方、番組の構成や画面の派手さなどが違っていて面白いです。同じニュース内容でも取材ポイントが違ったり切り口が違っていて国際情勢やメディアの実情の勉強にもなります。台湾のニュース番組はポップでカラフル、見ると元気になります。毎日視聴することで自然と語彙も増えていきます。
移動中や料理中は中国語音源やラジオをきく
私は中国語学習中だった台湾と広州在住時、バスに乗っている時はほぼ中国語のリスニング時間に当てていました。中国語テキストの音源やHSK語彙集の音源、それからラジオです。喜马拉雅というオーディオアプリは中国の小学校の教科書音読から古詩、歌、小説など多種多様な音源があってオススメです。
移動中や料理中は文字を見るのがしんどいため、オーディオのみで耳に集中することができます。これはとても効果的に聴解力を鍛えることができます。
外にいる時は耳をダンボにして周囲の中国人の言葉を聞く
実はこの姿勢があるかないかが同じように現地で生活していて中国語力がつく人とつかない人の差がつくキーだと思っています。私は外では常に周囲の会話を聞いていて、特に店員と客のやりとりは絶対に聞き逃せません。
行列に並んでいる時は大チャンスで、前の方のお客さんと店員のやり取りを聞いて言い方を真似します。大抵教科書通りではないもので、ネイティブの表現を真似すれば店員もスムーズに理解してくれて「あ?」などと言われて凹むことが減ります(笑)
学習とは模倣から始まるのです。
言語交換の相手を見つける
現地に住んでいれば対面で言語交換ができる、これは大きなメリットです。私は台湾にいた時は大学の食堂で声をかけてきた人の友達の日本語学習者、広州にいた時は知り合いの日本人の紹介で大学の日本語学科の教授と言語交換をしていました。
カフェなどで紙とペンを片手におしゃべりするだけ、言えない言葉や聞き取れなかった言葉は紙に書いたり書いてもらったりして、記憶します。これは本当に会話力の向上につながりました!友達もできて現地の情報を聞いたりもできるので一石二鳥どころではありません。
アプリやスカイプなどでチャットする
私は台湾にいた時は日本語の学生と夜や週末によく日中織り交ぜたチャットをしていました。文字を打ってやり取りするチャット形式で会話をすることで耳で聴いているだけでは文字が浮かばなかった言葉や理解できていなかった単語表現をしっかりと文字で確認することができます。メールと違ってチャットは会話のようにテンポが求められるので、会話に必要不可欠な瞬発力も鍛えられます。
今は言語交換アプリや外国語学習アプリも充実しているので、身近にチャット相手が見つけられなくても練習することができます。
積極的に現地の人と話す
この姿勢こそが大きな差を生みます!私は言語学習に関しては友達がびっくりするくらい積極的で社交的になります。店員さん、タクシーの運転手、路上の物売りなど、必要以上の会話をして勝手に練習相手にします。反対に進歩しない人はこの積極性がありません。
いろいろな人の生の言葉を聞いて会話をすることが圧倒的会話力の向上に直結し、自信にもなります。多少の言い間違いや不完全な発音も気にせず、相手のいうことでわからない部分があってもざっくり意味が取れて返事ができればOKとし、ひたすら場数をこなします。相手が言ったことがその時は分からなくても、後で勉強したことと繋がって理解できる、なんてこともよくおきます。そうすれば実体験と学習が連結するので強く記憶に残り、自分のものになります。
ドラマや街中で聞いた言葉、現地の人との会話で知った言葉の中でこれは使える、使いたい!と思ったものはすぐメモするようにしましょう。たとえそのメモを見返すことがなかったとしても、思い出して書いたことで記憶に残りやすくなります。
住んでいる間に話せるようになるためのマインド
語学ができないというマインドブロックを外す
学生の頃から英語苦手だったし、俺語学の才能ないんだよね。
仕事で忙しいし勉強なんてしてる暇ないから
中国語ペラペラなんて一部の才能ある人だけだろう。普通はなかなかねえ。
日本から一歩も出ないならそう思っていて結構です。でも、もう出たんですよね!日本にいる時と違ってあなたがやる気にさえなれば周りの環境は整っています。過去、外国語ができなかったとしてもその時と今ではあなたも周囲も変わっています。中国語が話せない中国人に会ったことがありますか?あなたが日本語ペラペラなのは日本語環境で生きていたからですよね。今環境があるんですよ、住んでいる今やらないならいつやるの?今でしょ!
実はあるかもしれない民族意識や愛国心を横に置き、住んでいる国に敬意を払う
私は日本人よ!そりゃ中国語が話せたらかっこいいかなとは思うけどわたしは日本を愛しているから!
あ〜イライラするわ、本当この国(ピー)なんじゃないの!
そうは言っても日本より遅れてる国やしねえ。
外国に住んでいるとどうしても我が国とあれこれ比べてしまったり、外国の悪い点が目についてしまったりします。日本人は民族意識や愛国心が中国人のように顕著に表立って現れていないので本人も意外と気付いていなかったりするんですが、実は心の奥底で居住国のことを下に見たりしていることがあります。
私は現在中国で大学生に日本語を教えていますが、日本語学科で毎日専門に長時間勉強していても日本語が上手にならない学生は実は強すぎる民族意識や愛国心を持っている場合があります。Wechatの背景が中国の国旗で真っ赤だったり投稿が党に忠誠を尽くします的なものだったり….。根っこの部分で日本に敬意や興味を持てていないので、それが語学習得のブロックとなります。
人間興味や愛のあるものに対して学ぶことは全然苦にならないし、吸収も早いです。エンタメでも文化でも食でもなんでも「めっちゃ好き!」と思っているものがあると語学の習得が断然早いです。
現地人になり切る
中国語を話す時は中国人もしくは台湾人になり切りましょう。日本人のままで中国語を話すべきではありません。見た目はほぼ同じですから気持ちさえなり切ればいいんです。中川礼二さんの広東語や韓国語がそれっぽく聞こえるのは彼はものまね魂で成り切っているからですよね。
私は中国語学習の最終目標を「外国人だとバレないこと」にしていました。その甲斐あって台湾に住み始めて3週間で「長年住んでいる日本人」にみられ、2年目には台湾人に見られていました。今では大陸でまず外国人だとは思われません。実際にはネイティブレベルの語彙も会話スピードもないんですが、発音とネイティブっぽい表現方法、なり切り具合からそうなれているのだと思います。
発音と表現はものまねです。真似→練習→堂々となり切って使う、この繰り返しです。
とにかく堂々と大きな声で!
そんな私も最初の頃はお店などで通じなくて「ああ?」と言われて凹むこともありました。正しく発音しているつもりなのに何が違うんだろう?とネイティブの友達や先生に聞いたりしていくうちに、あることに気がつきます。それは、、声が小さいということ!発音は合っているはずなのに通じない理由は意外にも声の小ささ、ひいては自信のなさが原因なのでした。
確かに中国語を話す人たちは声が大きい人が多いです。大学の先生の中には教室でマイク使ってるのかと思ったら肉声だったというオペラ歌手並みの声量の人もゴロゴロいます(笑)
特に行列して何かを買う場合などは声の大きい人から注文が通ります・・・。自信がないからと言って小さな声で遠慮していたら発音があっていても聞き取ってもらえません。本当に発音や声調が間違っていることもありますが、とにかく声を大きく出していきましょう。
腹式発声で!日本語を話すときより口を大きく開けて筋肉を使って、奥の方から声を出す感じです。中国語の発音練習は筋トレです!
疲れたら休んで日本人魂を癒してあげる
毎日中国語漬けだと数ヶ月に一度「もうやだ〜!中国語聞きたくない話したくない!」というイヤイヤ期がきます(笑)。これはあるあるみたいです。そんな時は躊躇なく休めば良いんです。日本語のドラマを見たり、日本人とおしゃべりしたり、家族に電話したり、日本料理店にだけ行ったり。そんなことをして自分の日本人魂を癒してあげているうちにまたやる気が湧いてくるものです。
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